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桜咲く季節には

あれは何年か前の4月のこと、私は仕事を終えて月1で行われていた体験グループに向かっていました。あたりはもう暗くなっていて、ライトに照らされた満開の桜に目を奪われつつ自転車をこいでいると、突然「コンダクターが死んだらどうしよう」という不安に襲われ涙が出てきました。

 その日のグループでは、その事を震えながら話したこと、グループのみんなが色々な形で受け止めてくれたこと、何となく前向きな気持ちになったことをよく覚えています。グループの途中から、その不安はなぜか「お父さんやお母さんに何か起きていたらどうしよう」という心配にかわり、私はグループが終わるとすぐに両親に安否確認の電話をしたのでした。

 私は仕事柄、家での看取りの場面に立ち会うことが少なくありません。そのせいもあるのでしょうか、夜眠りにつきそうな瞬間や、天気が良くて晴れ晴れとした気持ちのいい瞬間に、本当に突然、今までに看取った場面や冷たくなっていく感触、家族の声が思い出されたりします。それと同時に、自分や家族が死んでしまうのではという不安に襲われます。看取った場面が再現されるのですが、死んでいるのが自分だったり、大切な家族だったり。

それは一瞬とても悲しい体験ではあるのですが、目を閉じてしばらくしていると、自然とあの「コンダクターが死んだらどうしよう」のグループに置き換わっていくのです。怖さや緊張はだんだんやわらいで、故人を偲ぶ気持ちや、周りの人への気遣いや大切に思う気持ちに変わっていくのが分かります。あの時のグループの体験と深くつながっているんだと感じます。

 私がこの現象に気づいたのはそのグループからしばらくたってからでした。自覚するようになってからは自分でその現象に名前をつけて(どんな名前をつけたかはナイショです)、大切な「儀式」として体験していました。本当は恥ずかしくてこの事は秘密にしていたかったのですけれど。でも、こうして書きおこす事で自分の中で輪郭を持った「とても意味のある体験」になった気がします。

 今年は桜の開花時期の天気が良くて、毎晩缶ビールを片手に公園でお花見を満喫しました。これからも桜の季節が来るたびにあの時のグループのことを考えるようになるんだと思います。

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